written by めぐ












◆第6話◆


「うーん。検査結果を見る限り、体力は消耗していますし栄養失調ではありますが、別段その他の異常は無いんです。正直申しまして、心の病気とでもいいましょうか……生きるのを放棄している状態だと見受けられます」

マヤを病室に残したまま、別室で検査結果を聞いた麗は、そのあまりの内容に呆然とした。
あんなに紅天女に固執していたのに、生きるのを放棄って…。

「ですから、専門の病院に移られて、ゆっくり養生された方が宜しいかと」

「そ、そんな。じゃあ、マヤは…」



そのとき、部屋の扉が微かな音を立てて開いた。

「私が責任を持って、彼女の入院生活をサポートしますよ」

「は、速水社長っ!貴方が何故ここに…」

「彼女は紅天女の大事な候補の一人だからな、万全な状態で試演をしてもらうためには、所属がうちでないとはいえ、大都芸能も全力でバックアップさせてもらうさ」

「貴方が…マヤを……それにしても何故ここが判ったんですか?」

「こちらの院長とは面識があってね、事情はお話ししたし、逆にお聞きした。どうだ、君にもマヤにも悪いようにはしない。全て俺に任せてはくれないか?」


麗は、内心ひどく動揺した。
マヤが生きるのを放棄しているというならば、その原因の大部分を占めるのはこの速水社長なのではないか?

でも。

常々、彼とマヤには奇妙な因縁を感じていた。

そして、マヤの為にと無理にも個室を用意しては貰ったが、マヤにも麗にも、その医療費がすんなり出せるほどの蓄えはない。
転院させるにも、何のツテもなければ、マスコミをシャットアウトできるだけの力もない。


しばらく逡巡した後、麗はやむなく承諾した。










青木麗の前では、何気ない素振りを装ったが、真澄は内心ひどく狼狽えていた。

マヤが、生きるのを放棄している、だと?!

あらゆる手を使って情報を収集していた聖と夜半に落ち合い、善後策を講じた。
早朝から院長に面会を申し入れ、速水の名を盾に、マヤの状況を全て把握し、またこちらの条件を飲ませた。

こんなときのために、速水姓を名乗っているのだ、と自嘲する。

マスコミ対策、黒沼グループへの配慮、演劇協会への根回し、やらねばならないことは山程ある。


紫の薔薇の繋がりも既に無く、紅天女の試演がいつ執り行われるかも判らない状況下で、でも俺は、マヤの為に出来ることなら全てやる。
マヤが、マヤらしく生きていってくれなければ、俺は……俺こそ、生きている意味がない。


そして、真澄はマヤが病に臥して以来、決して彼女の元を訪れることは無かった。










07.04.2006


…to be continued









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