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| written by めぐ
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◆第5話◆ 食事の後、早々に紫織を車で自宅へ送り届けた後、首都高速を巧みなテクニックで数周した。 何とか、自分の主張を紫織に承諾させた真澄は、その間に貼り付けていた自分の偽の笑顔をこそげ取るかの勢いで、車を乗り回さずにはいられなかったのだ。 ようやく心の平静を取り戻し、今からこれでは結婚してからが思いやられる……と我が事ながら呆れて苦笑した。 高速を降り、何も考えずに適当に運転したら、マヤのアパートのすぐ近くまで来てしまった。 真澄は、路肩に車を止め、そういえば、と携帯電話の留守電をチェックする。 秘書の水城から、明日の予定変更について1件。 そしてもう一つは、聖からだった。 「真澄様。緊急事態です。マヤ様が今ほど救急車で運ばれました。詳細は追ってご連絡します」 ……どういうことだ。 聖の携帯電話に、即刻かけ直す。 「聖か?俺だ。マヤが救急車で運ばれただと?どの病院なんだ?」 「はい。T女子医大付属病院に搬入されました。容態は、はっきり判らないのですが、どうやらアパートの中で気を失って倒れていたようです。帰ってきた青木さんが見つけられたようでして…」 「T女子医大付属だな?あそこなら少々ツテもある。お前は今どこにいるんだ?」 「病院の駐車場に居ります」 「今からそっちへ向かう。済まないが、しばらく待機していてくれ」 真澄は、聖が「畏まりました」と言い終わるのすら聞かずに通話を切ると、即座にT女子医大付属病院へ急行した。 ![]() 「先生……マヤは、この子は…」 「栄養失調ですから取り敢えず栄養剤を点滴しています。恐らく数日間何も口にしていなかったのでしょう」 「じゃ、それ以外には…」 「相当体力を消耗しているようですが、まず意識を取り戻さないと確認のしようがないですから、気がつかれたらナースコールして下さい。本来なら、うちは完全看護なので付き添いは不要なのですが、事情も事情ですし、意識が戻るまではお出でいただいても結構ですから」 「はい。有り難うございます」 深々と頭を下げる麗を一瞥して、当直医が急患室を後にした。 ストレッチャーに乗せられたマヤを、看護師が病室まで運ぶのに付き従う。 ぱっと見には芸能人とは思われないマヤだったが、麗は病院側に事情の説明を試み、何とかプライバシーの確保できる個室を用意してもらった。 看護師にも、マスコミに知られないに秘密裏に手続きをしてもらうべく低姿勢で頼み込んだ。 マヤの顔は一般の人々には一向に知られていなかったが、名前を聞けばなるほどマスコミを賑わしている芸能人だと理解されたようで、必要以上に頭を下げる麗との関係を、妙に疑いながらも、快諾してくれた。 ![]() マヤ…。 個室のベッドで未だ意識を取り戻さないマヤを見つめ、麗は言葉も無かった。 いくら忙しくても、公演の合間に電話のひとつもしてやれば良かった。 何も口にしていないだなんて……確かにお金は心もとなかった筈だけど、大家さんにでも頼めば何とかなっただろうに。 夜半から降リはじめた雪混じりの雨が明け方に上がり、雲間から射す朝日がカーテンを開け放した窓から僅かに覗いたそのとき、マヤが微かに身じろぎをした。 「マヤ? マヤ?」 点滴をしていない方の右手を掴み、軽く揺する。 しばらくして、マヤがゆっくりと目を開けた。 「マヤ?」 全くの無反応。 何も映さない漆黒の瞳。 そこにいるのは、マヤの姿形をした、ただの人形だった。 07.03.2006 ![]() |
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