written by めぐ











◆第3話◆



マヤがコンビニでアルバイトを始めて、彼是1週間が過ぎた。

淡々と仕事をこなす日々。
初日には喜んで持ち帰った廃棄弁当だったが、次第に食欲が無くなって、食べられなくなった。


あの日感じた顔の違和感は、日を追う毎に頻繁に現れるようになった。
自分の意思では止められない右目の痙攣。

レジで店番をしていても、どうしても笑顔が出せなくなった。
微笑まなくてはと思うと、途端に痙攣する右頬。

現実逃避している訳じゃない、と心に言い訳するたびに起こる痙攣。


自覚症状はあっても、他人の目には大して映らないだろうと言い聞かせて働いていたが、とうとう店長に問われた。

「あのさ。前から気になっていたんだけど、その目、大丈夫?」

「あ、あの………」

マヤは居た堪れなくなって、ついにその場から逃げ出してしまった。



コンビニから発作的に飛び出してしまったから、ユニフォームも着替えず、バッグも持たず、ひたすら人に顔を見られないように俯いて走り続けた。
正直なところ、どこをどう走って帰ったのかさえ覚えていない。

そのまま、どれだけ時間が経過したかもわからないまま、電灯も点けず、アパートの部屋で独り膝を抱える。


――どうしよう。

このぴくぴくしてるの、外から見えちゃっているんだ。
仮にも女優なのに、顔がぴくぴくしちゃって、それが自分で止められないなんて。
阿古夜の気持ちとか、それ以前の問題だわ。


どうしよう。

もう、演技が出来ない。
誰か、助けて………。



ムラサキノ……

……バラノ……ヒト………



ああ、もう私には、何も残らない。












翌日から、マヤはアルバイトへ行かなくなった。


どうしても、アパートの外に出られなくなったのだ。
いくら支度をして、いくら自分を叱咤しても、扉を開けようとすると、顔の痙攣が起きる。

誰かに見られたらどうしよう…と、その場から動けなくなる。


そして、日課だった早朝のジョギングも、当然出来なくなってしまった。












マヤの変化をいち早く察したのは、聖だった。
例により、真澄に依頼されている種々の調査の経過報告を終えた後、話を切り出した。

「実は……この数日というもの、マヤ様のお姿が見えません。近頃はコンビニでアルバイトをなさっていたのですが、アルバイトを無断欠勤しているようです。早朝のジョギングにも出ていないようでして。ひょっとして何処かにお出かけになっているのかもしれませんが…」

「…体調でも崩して、部屋の中で倒れているのか? 確か、青木君はまだ地方公演から戻らないのだろう? 数日様子を見て、それでも姿が見えないようなら、済まないが大家に部屋の中を確認してもらってくれないか?」

「承知致しました」

真澄は、自ら動けない状況を作り出した己自身を呪った。

何か、あったのか?
そもそも、マヤがコンビニでアルバイトなどと…!










07.01.2006


…to be continued









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