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| written by めぐ
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◆第17話◆ 久しぶりに麗に会ったマヤは、飛び上がらんまでの勢いで麗に抱きつき、ひとしきり甘えた。 その場に居合わせた真澄は、見当違いと知りながらも、麗に対して若干の嫉妬を覚えたほどだ。 麗は、そのまま稽古場に流用しているスペースを見学した。 マヤを交えて由布子とも親しく話し、その人となりを目の当たりにして大いに安心した。 マヤの取り巻く全ての環境を見れば、どれだけ真澄がマヤの為を思って采配を振るっているかが、なるほどよく判る。 一通り歓談も終わった頃、真澄が病室に戻ってきた。 そして、おもむろに口を開く。 「マヤ。実は、アメリカで行われた亜弓君の目の手術は成功し、今彼女は必死でリハビリを続けているんだ。向こうの医師団の話では、もう日常生活にほとんど支障がないくらいにまで、快復しているという。そろそろ帰国も可能だということだ」 マヤは、自分のことのように嬉しそうな顔をして、真澄を真っ直ぐに見つめる。 人の良いマヤらしいことだと、思いつつ、その真っ直ぐな瞳を喜ばしく受け止め、見つめ返しながら、――そこで、だ、と真澄は続けた。 「そろそろ、紅天女の試演の新たな日程を組みなおさなければならない段階にきている。――どうだ、できるか?紅天女になってみたいか?」 「はい。できるかどうかは、正直まだわからないけれど……今なら紅天女の気持ちがちょっとわかる気がするんです。やります、やらせてください」 迷いのない目をしている。 そして真澄は、麗に、由布子に視線をうつす。 麗は、マヤの前向きな様子に感極まったのか、若干瞳が潤んでいる。 由布子はちらりとマヤの様子をみてから、大丈夫です、と、真澄に頷き返した。 「では、試演の日程の調整に早速入ることにしよう。調整がつき次第、また連絡する」 「どうする?このまま稽古場代わりにこちらに入院を続けていても構わないし、青木君と帰りたいのなら、医師に退院許可を貰うことにするが」 「――入院させていただいているのに、かなりお金かかっていますよね?」 「金のことなど、何も気にしなくていい。マヤ、まだわからないのか?」 「だって」 「君のためなら、俺は何だってする、と、この前ちゃんと言っただろう?頼むから、君が望むように、全てを整えさせてくれ。ま、俺は、君がいうところのゲジゲジ仕事虫な社長をしているんだから、だいたい金のことなど思いのままなんだがな」 「でも」 「でももヘチマもない。正直に言わないと」 「言わないと?」 「この部屋を、薔薇の花で埋め尽くしてしまうぞ」 にやりと笑った真澄の一言に、マヤは一瞬目をしばたかせて嬉しそうな表情を浮かべたが、直ぐに我に返った。 そして、訥々と話しだした。 「本当は、早く退院して、麗とアパートに帰りたい。早く、黒沼先生の稽古が受けたい。だけど、由布子さんとお別れするのは、正直寂しくて」 「…マヤさん、嬉しいことを言ってくれるのね。でも、大丈夫ですよ。私にとって、マヤさんは実の娘みたいなものなんだから。いつでも話せるし、いつでも会える。…いつも、気にかけているから」 麗が、マヤの頭をポンと叩く。 病室全体に、えもいわれぬ温かな空気が満ちる。 マヤは、様々な愛に満たされたその空間にその身を委ねるうち、心のうちに棲む阿古夜が徐々に感応していく手応えを、確かに感じた。 出来る。きっと、出来るわ。 07.28.2006 ![]() |
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