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| written by めぐ
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◆第14話◆ 爽やかな秋晴れの早朝、真澄は無理やりスケジュールを調整し、マヤのいる病院へと車を走らせていた。 順調に流れる車の中で、落ち着かない思いを持て余し気味である。 今回の訪問は、担当医師に今後のことを相談するのが目的であったが、一方マヤに会えたらどう対峙すべきか頭の中で様々なシミュレーションを重ねていた。 まだ紅天女関連の記者会見は一度も行われていない。 結局、姫川亜弓の完全な快復を待ってから行うことになったのだが、それはもう時間の問題であった。 マヤは、順調に快復しているといっても、実際問題、試演には間に合うのか? 心の問題ともなれば、アプローチの仕方を誤ればまた事態は悪化しかねず、マヤに対峙するには相当の慎重さを要する。 高速道路を降りて、緩やかな山道を登っていく。 あたりには、既にちらほらと赤みがかった木々もある。 季節の移ろいを自然から感じるのは、日々の煩雑な業務に埋没している真澄にはとても新鮮なことだった。 自然と速度は緩められ、車窓を開け、自然の息吹を内に取り込もうとする。 これからマヤに会えるかもしれないのだ。 願わくは、穏やかな気持ちで対面したい。 ふと視界の開ける場所に差し掛かり、明るい方向へ目をやると、思いがけない人影があった。 ―――マヤ? 慌てて車を路肩に停め、シートベルトをもどかし気に外すと、真澄は車外へ飛び出した。 「マヤ?!」 「…え?…速水さん……何で…」 「君は一体、何をしているんだ?」 「えと、アパートに戻ろうと思って…」 「勝手に病院を抜け出したのか?」 「…だって、もう随分といいんです。だから、早く阿古夜にならないといけないと思って…まだなれるか判らないんですけど。でも、とにかく黒沼先生に稽古をつけてもらわないといけないから」 「だからって、退院許可が出た訳ではないだろう?」 「でも、自分の体のことは、自分がよく判っています。もう大丈夫です。速水さんには、本当にご迷惑をおかけしましたが…」 「迷惑なんかじゃない。そんなこと、二度と言ってくれるな。それより、君はどうやってアパートに帰ろうとしていたんだ?」 「歩いてですよ。そんなの当たり前じゃないですか」 「……莫迦か、君は?!」 「バ、バカって、何ですか!」 「ここから君のアパートまで、どれだけあると思っているんだ?」 「そんなの、よく判らないけど……私には二本の足があるんだから、歩けばそのうち辿り着くかな、なんて…」 「君の足では、夜中まで歩いたって辿り着けないぞ、絶対」 「でも、何とかなりますよ。ていうか、何とかしなくちゃいけないし」 「何故?」 ―――速水さん、判ってくれないんだな、やっぱり。 頼れる人が誰もいなくて、先立つものが何もない、ちっぽけな私のことなんて、やっぱり判らないんだな。 これ以上、紫の薔薇の人、速水さんには迷惑かけられないし。 タクシー代や電車賃はもとより、今日食べるものすら覚束ない貧乏なんて、きっと速水さんには無縁だもんね。 ダメダメ。私、しっかりしなくちゃ。 ―――マヤ、一体何を考えているんだ? 勝手に病院を抜け出して、あまつさえ歩いて帰るなどと。 人の好意に頼らず、自分だけで何とかしようとするその考えや行動が、危なっかしくて見ていられない。 俺にとってそれが一番の迷惑なのに、そんなことも判らないのか。 07.20.2006 ![]() |
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