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written by さくら
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澄み切ったニ月の青い空。 清々しいほど晴れ渡り、柔らかな光に包まれたある日の午後。 穏やかな風に乗って舞い散る梅の花びら。 甘酸っぱく心を擽る梅の香。 マヤは鼻の奥がツンッとなるのを覚えた。 「マヤ?」 マヤの腰に手を添えていた真澄は、マヤの僅かな震えを感じた。 見れば、大きな瞳に涙をいっぱいに溜めている。 「どうした?」 真澄はマヤの耳元に顔を近づけ、小さな声でマヤに言った。 「ううん、何でもない...」 マヤはゆっくりと頭を振り、ハンカチでそっと涙を拭いた。 リンゴーン、リンゴーン 教会の鐘が二人を祝福するように、高らかに鳴り響く。 扉が開かれ、たった今夫婦となった二人が顔を出した。 真っ白なドレスに身を包んだ花嫁の輝くような笑顔と横に立つ新郎の幸せそうな微笑は、見る者の心に春風を呼んだ。 ゆっくりと階段を降り、人々の中へと入っていく。 色とりどりのバラの花びらのシャワーと祝福の言葉を浴びる新郎と新婦。 幸せに満ちた笑顔から大粒の涙が零れた。 真澄はマヤの涙に気付くと、親指の腹でそっと涙を拭った。 「こんな幸せな日にきみはなんで泣くんだ?」 ちょっと困ったような顔をして真澄が言う。 「幸せだから...」 「きみは幸せだと泣くのか?」 真澄はマヤの肩に腕を回し、そっと抱き寄せた。 マヤは自分の体を真澄に預け、寄り添っている。 真澄は腕と体にかかるマヤの重みに幸せを感じた。 「そうだな。泣きたくなるほど幸せな時間(とき)があるのかもしれないな。」 真澄の腕の中で微笑むマヤの姿は、誰よりも美しかった。 愛するものだけに見せる笑顔。 愛するものだけが見ることのできる微笑。 それを手にしている真澄は、幸せ以外の何者でもない。 「あたし、今日の日を忘れない。」 マヤは真っ直ぐな瞳で真澄を見た。 「あなたと出会って、今日までたくさんのことがあった...楽しかったことも哀しかったことも、辛かったことも苦しかったことも。 でも今ならわかる。それは全部あなたと一緒に歩いていくためだったんだって。 あなたとともに生きていくためだったんだって。」 「マヤ...」 真澄の瞳が揺れた。 「あたしはあなたの手に引かれてここまできたの。 まだ少女だった頃からずっと見守ってくれたあなたの手で。」 マヤは真澄の大きな手を取ると、自分の頬に当て瞳を閉じた。 「あたしの人生にいつもあなたがいた。」 マヤの睫毛が僅かに震えた。 「初めて出会った椿姫の舞台の日。 紫のバラを初めて貰った日。 初めてのあたしのファン...」 マヤの頬に触れていた真澄の手が、マヤを包む。 「芸能界から追い出されたあたしを待っていてくれたあなた。 1%の可能性を信じてくれたあなた。 愛しているといってくれたあなた...」 「マヤ...」 真澄の心はひどく苦しかった。 マヤの告白に心乱され、この場で抱きしめ思い切りその唇を奪いたかった。 「あたしにとってかけがえのないあなたの、かけがえのないあたしになったあの日を忘れない。」 マヤは真澄の琥珀色の瞳を見つめた。 「あの日からあたしの人生はあなたとともに始まった。」 マヤの瞳に映る自分を見ながら、真澄の脳裏に出会いから今日までのことが走馬灯のように甦り過ぎ去っていく。 紫のバラを初めて贈った日。 マヤを傷つけた日々。 唯一の肉親を奪い去った日。 愛を自覚した日。 愛に苦しんだ日々。 マヤを求め、マヤの魂を乞い、マヤを欲した数え切れない日々。 そして、二つの魂が一つに溶け合った、初めての夜。 「マヤ、おれの人生はあの日から始まったんだ。」 想いが通じ合った日。 二人で初めて過ごした甘美な夜。 喧嘩して大泣きした雨の夜。 逢えなかった日々。 赦されたあの日。 同じ人生を二人で歩んでいくと誓った日。 幸せに包まれた日々。 新しい家族を迎えた日。 我が子の成長に喜びを噛み締めた日々。 そして今日、愛する人とともに新しい世界へ飛び立っていく我が子の晴れの日。 「あたしにはたくさんの記念日があるの。」 マヤはほんの少しの寂しさを含んだ笑顔を真澄に向けた。 「真澄さんがくれた記念日とあの子がくれた記念日。 そしてあたし達皆で一緒につくった記念日がたくさんあるの。」 「そうだな。おれにもたくさんある。すべてきみがくれた記念日だ。」 マヤの瞳から一粒の涙が零れた。 真澄は少し屈み、己の唇でマヤの涙を拭った。 「今日からまた新しい記念日がどんどん増えるな。」 真澄はマヤの瞳を優しく見つめた。 「孫が産まれ、おじいちゃん、おばあちゃんと呼ばれる日もくる。 孫の成長を見守り、ともに遊ぶ日が楽しみだ。」 「そうね...」 マヤがゆっくりと頷く。 「何よりも、これからもきみと一緒に生きていく日々すべてがおれにとって記念日だ。」 「あたしも...あたしにとっても真澄さんとともに歩いていく日々全部が記念日になるわ。」 今までと同じように喧嘩をしたり、一人で過ごす夜もあるだろう。 ともに笑い、ともに泣き、ともに喜び、たくさんの同じ時間を過ごしていく。 春を愛で夏を愛し、秋を惜しんで冬を侘びしむ。 ありふれた毎日が記念日となる。 たとえ死が二人を分かつとも、一つになった魂は二度と離れることはない。 二十数年前、神に誓った同じ場所で再び誓いの口づけをした。 「パパ、ママ!」 満面の笑みを携え、神に祝福された花嫁が駆け寄ってくる。 その後ろからゆっくりと彼女を見守るように近づく人影がある。 愛と決意に満ちた瞳をもった彼女の最愛の人。 「さあ。」 真澄はマヤの背に手を添え、ゆっくりと歩き出した。 見上げた空はどこまでも青かった。 03.04.2006 ![]() □さくらさまより□ 実は私も30のお題に参戦したかった一人です。もちろん日参どころではなく、日に何度も通わせていただいてますが、私自身も1月25日に自宅持ちになったばかりで余裕がなく、ど〜しよう、と悩んでいるうちにすべて決まってしまってました(泣)。 一度は諦めたのですが、やはりお祭りに参加したい!という思いと、投稿すれば杏子さんの未発表作を手に入れることができる!!(こっちのほうが強い)と邪な考えを持ちまして、思い切って「present部屋」に投稿することにしました。 こんな拙い文章ですが、杏子さんを、そして読んでくださった皆様のお心が少しでも温かくなりますことを願っています ![]() □杏子より□ ESCAPEのAnniversaryにかけた、二人のAnniversaryパロ!!感激感謝恐縮至極!!! 2人の今、そして未来と繋がって行く時が示す、二人の幸せとそして人生のAnniversary。読者というのは欲張りなもので、常にENDマークの向こうを求めてやまないわけですが、そんな願望を叶える、ENDマークのそのもう一つ向こうのENDマークなお話。 さくらさん、ありがとうございました!! ![]() |
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