| □□第3話□□ written by キティ |
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No.1 『人生、全てが手に入ることは無い…と最近やっと気が付きました。 何も取柄のない私を一生懸命に育ててくれた母親を捨てる様にして月影先生の所へ行き、辛く苦しい演劇への道のりを歩み、そして念願だった紅天女を手に出来た。 でも家族の温もりや、その時当たり前にあったであろう青春時代を知らずにこの歳まで来てしまいました。(ってまだ若いですけどね!) そして、それは速水さんも同じではないかとも思いました。 子供の頃の辛く悲しい人生を経たからこそ(速水さんのお家にお世話になった時お手伝いの方から速水さんの子供の頃のことを聞きました)今は大きな会社の社長さんであったり素敵な女性と結婚されたり出来たのだと。 それと速水さんは自分では気付いてないと思いますが、と〜ってもハンサムなのです。その美貌?も人生の代償に入れてもいいと私は思いますが…へへっ生意気言ってすみません。 この手紙を書こうと思ったのは、実は舞さんに会ったからなのです。 速水さんはきっとご存知無いでしょうね、舞さんの事。 桜小路君の別れた彼女で、オンディーヌ所属の女優さんです。先日テレビドラマのお仕事で偶然(後で聞いたら意図的だったようです)会いました。最初ちょっとやりにくいなって思いましたけど、まあそんなに絡むシーンも無いので適当に挨拶して…と思っていたら最終日に声をかけられました。私は桜小路君から舞いさんとはきっぱり別れたからと聞いていたので「?」と思いましたけど、少し時間をとって欲しいと言われ、その日はもう予定も無かったので、二人で撮影所近くの喫茶店に行きました。最初は「桜小路君は元気ですか?」など他愛の無い話しでしたけど、何か話し足りなそうな顔をしていたので何か他に話す事があるの?と聞いてみました。そうしたら舞さんはまだ桜小路君のことを待っていると言うのです。そして桜小路君もそれを知っていると。 え?っと思いました。ええっ?話しが違う!って 二人の事を終わりにする事に舞さんは納得してくれた、と桜小路君は言ったではないか。だから私も桜小路君からの交際を受け入れたのに。 桜小路君は待ってもらっても舞さんのところには戻らないと言ったそうです。でも舞さんは待つと答えた。どうなんでしょう?こう言うのって。辛いですね。 私何書いてるのかって思ってません?11も歳が離れていて結婚もしている会社の社長に何の話しだ?って思ってるかもしれませんが、最後にこの話しも必要になるので我慢して読んで下さい。あっ、出かける時間です。それではまた!』 日記の様だな…と真澄は思った。 この数年マヤとは挨拶と仕事での必要な会話は交わす事があっても、このようなマヤの日常を知る事なんて無くなっていた。聖に調べさせれば簡単だが、桜小路と交際しているマヤの事を聞いて知ってしまえばまたマヤの事を深く考える自分がいて… それが酷く惨めに感じてしまう。 真澄はNo.2と書いてある明らかに別の日に書いたであろう手紙を手に取った。 No.2 『「母の事」 えー この事を速水さんに伝えるのはすごく残酷な事なのだと思いますが、 私と速水さんの人生の中で避けては通れない事なので、あえて書きます。 よくよく考えると速水さんと私の境遇ってちょっと似てますよね。 父親がいない家庭で育ち、 同じ位の歳で母を亡くす …です。 速水さんにはお義父さん、私には月影先生がいましたけど、 お二人とも厳しくて…母親のような愛情…では無かったと思います。 速水さんは寂しくなかったですか? 私はすごく寂しかったです。 麗達は優しかったけど、やはり母親の愛情とは違います。 でも「演技」をしている時はそれを忘れられる自分がいました。 速水さんにとってはそれは「仕事」でしたか? イヤな事を書くな…と思わないで下さいね。私、最近思うのです。 速水さんが忙しく仕事をするのは色々な辛い事を忘れるためではないのか…と。 母を亡くした時は速水さんを心底恨みました。冷血漢のあなたです。 仕事の失敗の1つ位にしか思っていなくて、何も感じていないのだろうと。 でもその後、速水さんが私の母の命日に紫のバラを供えて下さっているのを知りました。速水さんは母さんの事忘れないでいてくれてたんだって…嬉しかったです。 そしてこう考えられる様になりました。 速水さんが私に「紫のバラのひと」として影ながら援助して下さったのはきっと 身寄りの無い私が不憫に思ったからではなかったのかと。 ちょっと歳が離れてますが 妹?みたいな感じですか? この予想が違っていたらすみません… でもたとえ違っていても、私の速水さんへの感謝の気持ちは変りません。本当に感謝しています。もちろん、紫のバラのひとへの感謝もですが、速水さんご本人への感謝がそれ以上にあるのです。 だって速水さんがああやって私に「やる気」を起こさせてくれなければ、今の私は無いのす。紫のバラのひとだけの助けではここまで来れなかったと本当に思っています。』 この手紙はここで終わっていた。 真澄は何も考えられなくなってしまった。マヤの気持ちを今更ながら知ってしまった。 ここまで読んで、真澄に対する恨み事は書かれていない。「感謝するのは自分の方だ」と、今すぐマヤをこの部屋に呼んで告白したいと思ってしまう。 今度はNo.3と書かれた手紙。 No.3 『今日はオフです。午後から桜小路君と会うことになっています。 どこか面白い場所に連れて行ってくれるそうです。 それまでこの手紙を書くことにしました。 さっきまで洗面所とトイレの掃除をしてました。 速水さんはそういった所を掃除したことありますか? (もちろん無いですよね。だって社長さんだし、お家にはお手伝いさんもいるし… 分かっていて意地悪で書いてみました!) 不器用な私ですが、集中してやっていくうちに見る見るうちに綺麗になっていくのが 結構楽しいんですよ。演技以外に自分を忘れられる時間かな?他には 寝ている時(当たり前?)、美味しい物を食べてる時、仲間としゃべってる時、 桜小路君とデートしている時etc うーん いきなりですが、手の内を見せてしまおうかっな?! 実は実は 私、速水さんの事が好きでした。 これまたビックリさせてしまってすみません。迷惑だとは思ったのですがせっかく今になって手紙を書くのだから我慢しないでこの事を書こう!って…はい、本当迷惑ですよね。 最初は速水さんが「紫のバラのひと」だから好きになったんだって思ってたんですけど、気持ちを色々整理していく内に紫のバラのひとと気付く前から好きだったんだって確信しました。』 手紙は続いていたが、真澄はあまりの衝撃に息をするのを自ら止めるかのように手紙を持っていない方の手のひらを口に強く押しつけた。 そんなことが…これは事実なのだろうか?マヤは何か冗談を書いているのでは? そう思うしかなかった。そう思わなくては… 『紫織さんとご結婚されてお幸せだという事は重々承知です。私も今はご存知の通り桜小路君とお付き合いしています。速水さんをこちらに振り向かせたくて告白したわけではありません、ご心配なく。 (って最初から振り向いてないことも承知してまーす)』 「振り向きっぱなしだよ、マヤ…」真澄はひとりごちた。 『えー、わたしも芸能人のはしくれとなりまして3年(高校生の時のことは抜かして下さい。あれは水城さんに守られていて世間を知りませんでしたから)、少しですが芸能界というところを見てきました。そしたら結構いるんですよ!自分の立場を利用して女優さんやタレントさんと関係を強いるような人が!!速水さん、そういうのって知ってました?って芸能社社長さんですもんね。私が知らないようなドロドロした事、きっともっといーっぱい知ってるんですよね。でも私にとっては衝撃的!だったのです。きっと私、今もそういった事から速水さんに守られているのでは?と思う今日この頃。(自惚れるなって声が聞こえそうですが) 脱線しました。なぜ今ごろ速水さんに愛の告白?って思うでしょ!そこなんです! 紫のバラのひととして色々プレゼントをして下さったり、 でも決して名乗らず、速水さんご本人としても色々助けて下さいましたね。 普通?何か見返りを求めるでしょ?って。 (まあ速水さんがこんなお子様を相手する訳ないですが) 確かに昔、速水さんは紅天女の上演権を手に入れたがっていたけど、 私が紅天女に決まって「上演権は速水さんに、興業は大都で」って言ったら、 速水さん最初「本気」で断りましたよね。 なんで?って思いました。あんなに欲しがっていたのにって。 また何か企んでるのかな?なんて…あら又脱線。 そんな優しくて安心できる速水さんだから正直に自分の気持ちを告白しようと思いました。 速水さんの「脳内スーパーコンピューター」の端っこにでもインプットしてもらえれば光栄です。』 真澄は手紙を置き、気持ちを落ち着かせるためにコーヒーを淹れに行った。 今日は日曜日とう事もあって社内は静かだった。もちろんこういった職業だ。ビルに1人もいないという事は無いが、幸い社長室のフロアには誰もいなかった。自分でしなければならないし、水城君のように美味しくは出来ないが今日は1人で良かったと真澄は思った。 04.09.2006 ![]() |
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