□□第7話□□





「今でもピアノは弾いているのか?」

感傷的になりかける自分を容赦なく呼び戻す声。
3年前、という自らが出した言葉に、もっと自分は何か期待をしていたようだ。そんな中途半端なことをする自分はきっと滑稽で、とんでもなく馬鹿馬鹿しい。
表情を着替えるように、マヤは微笑む。

「今でも弾いてますよ。今でも好きです。というか、3年間でもっと好きになりました……。
新しいお家にも、ピアノ入れることにしたし。ドイツの先生、結構厳しかったから、これでもかなり上手くなったんですよ」

明るい声。女優らしい、限りなく自然に近い、不自然な明るい声。真澄の目が少しもそれに対して同調するように笑わないので、マヤはさらに不自然な明るさを重ねていく。

「私、子供の頃から習い事とかもさせてもらえるような環境じゃなかったし、物心ついてからはお芝居しかしてこなかったから、趣味って言えるものが何一つなくて、だから生まれて初めて人並みに趣味とか、純粋に好きって言えるものが出来て、嬉しいんです」

喋り終わると、返事のしようのないことを喋ってしまったと、急に猛烈な後悔が襲ってくる。真澄の沈黙が痛い。何かを喋らなければ、そう思った瞬間、真澄が穏やかに答える。

「そうか、それはよかったな。もう今は、俺よりも上手いんだろうな。
俺は……」

そこで何かを躊躇うかのように、ほんの少しだけ間が出来た。言うか言うまいか、逡巡するほんの僅かの間。

「あれ以来、一度も弾いていない……」

今度はマヤが沈黙する番だ。
二人は、全てにおいて痛々しかった。
儀式的な会話以外は、何一つまともな会話を交わすことも出来ないという意味で、何より痛々しかった。

黙ったまま、真澄はマヤから最後の一枚の書類を受け取ると、気まずさを払拭するような話題を探す。

「来週のパーティー、もちろん君も来るんだろうな」

「主役が来なくてもいいって社長が言うなら、喜んでそうしちゃいますけど」

何を言っているんだと、真澄は手に持った書類でマヤの頭を軽く叩く。

「ヨーロッパに3年いても、パーティー嫌いは相変わらずか。
皆が紅天女に逢いたがっている。3年ぶりだ、無理もない」

こうして3年も日本を離れるなどという、女優として自殺行為に近いことをしておきながら、それでもまた温かく迎え入れて貰えるという現状。それは、それが紅天女であるからということと、守ってくれていたのが真澄であったからだと、マヤは心の中で静かに頷く。

「君にパーティーのドレスを贈りたい」

そんなふうに感慨深くさまよっていたマヤの思考の中に、ふいに落ちてきた真澄の声。急に投げられたボールを、咄嗟にかわすことが出来ない動揺がマヤの中に走る。

「え……、なんでですか?」

口にしたあとで、それが間違った言葉だったとすぐに気付いた。

「なんで……」

そうしてまた自分は、不用意に真澄を絶句させてしまう。

「3年ぶりの紅天女にだ」

社長として、過不足のない答え。

「それは……、光栄です。ありがたく頂戴いたします、社長」

同じようにマヤはそれに対しての女優としての模範解答を示す。



どこまでいっても、痛々しいばかりの空気だった。










「それでは3年ぶりの紅天女公演の成功を祈って、乾杯!!」

大都グループの執行役員の一人の長い挨拶が、ようやく終わると、乾杯の発声を合図にあちこちでぶつかるシャンパングラスの音が、会場中のざわめきを掻きたてる。
ありとあらゆる人に挨拶をし、3年間の非礼を詫び、今後の支援をお願いし、それを100回も繰り返したころ、たまらなくなったマヤはそっと会場の外へと逃げ出す。
ほんの少しでいい、中庭で外の空気が吸いたかった。

真澄から贈られたドレス。
3年前と怖いぐらいサイズの変わっていない自分に苦笑する。そんな自分のサイズを聞かなくても分かってしまう真澄という男の抜かりのなさに、さらに苦笑する。
硬質で少し冷たい感じのする、ホワイトシルバーのシフォン素材。
その昔、紫のバラの人としては、いつも暖色系のパステルカラーのドレスばかりを贈られていたから、それは少し意外なふうにマヤの目には映る。
夏が短く、日照時間が異常に短い北ドイツで過ごすうちに、この3年間でマヤの肌は随分と白くなった。その白い透き通るような肌の上で、そのホワイトシルバーは神々しいほどの光を発する。
つくづく抜かりのない男だ、とマヤは苦笑する。
肩の部分が大きく開いたビスチェタイプのそれは、3月とはいえまだ寒気が残るこの時期、剥き出しになった肩に粟が立つ。同じく真澄に贈られた同系色のショール。それらを胸の前で引き合わせるように、一層きつく巻きつけると、マヤはぶるりと身震いする。

(ほんとに抜かりない)

また一人で笑った。

「何を笑ってるんだ?」

後から不意打ちを狙ってかけたとしか思えないその声。どうしてこの人はいつだってこうなのか。異次元から突如、飛び出してくる。

「……っ!!またそうやって驚かせるっ!」

気恥ずかしさも手伝って、大袈裟にマヤは噛み付く。

「俺の趣味だ。君を驚かせるのは」

すました顔で真澄が笑った。

「よく似合っている」

紫煙を吐きながら、真澄は目を細める。こうして瞬時にその場の空気を変えてしまうことが出来るのも、真澄の特技であり、多分趣味なのかもしれない。先ほどの冗談にどう対抗しようかと考えているうちに、全く別の空気でその場を覆われ、マヤは途方に暮れる。

「ありがとうございます。みんなにも褒められました」

満足気に真澄は黙って頷いた。

「随分と立派に立ち回れるようになっていたじゃないか。挨拶も身のこなしも、もう立派な大人の女だ」

「褒められちゃった」

照れくささからマヤはにかんだように俯く。

「でもね、私こう見えても結構強くなったんですよ。ほんとに。
海外で3年も暮らしていたら、一人で生きていける程度には強く……」

そこまで言って、”一人で生きていける”という部分だけが不必要に飛び出した気がして、急に言葉に詰まる。嫌味で言ったつもりでは勿論ないはずなのに、言うべきではない言葉であったと。
そこまで考えて、一体どこまで自分は自意識過剰なのかとマヤは思う。
こんな些細なことにいちいち躓いていて、一体どうやって自分はこの先、何年も何十年も、この人の側で、この人の居る世界で、全くの他人として生きていくつもりなのかと。
そのとき、パーティー会場からワルツが聞こえてくる。こんな日本のパーティーで社交ダンスのために音楽がかかることなどありえない。ただのBGMだろう。けれども、それはとても懐かしい曲だった。

「これ、アヤコ・ローゼンベルクが好きだったショパンのワルツ……」

ショパンのワルツ、Op64のNr.2。物悲しい憂いを帯びたメロディーが哀愁を誘う。今の哀しみというよりも、過去のあの日を哀しむような旋律。
黙って真澄がマヤの手を取る。

そう、自分は大人になった。
こんなふうに、大人の男にワルツに誘われても、黙ってそれに応じられる程度に。
死ぬほど愛した男に手を握られても、動揺してステップを間違えない程度に。

ホワイトシルバーの薄いシフォンが、蝶のようにひらひらと舞う。真澄のリードで、軽やかに体が回転する。ふわりと体が舞う、そのありえない浮遊感に包まれた瞬間、突然体の自由が奪われた。
肩のショールを荒々しく掴んだ真澄の手がそれをどけると、剥き出しになった肩に噛み付くように口付けられる。

脳裏に鮮烈な稲妻が走る。


――会わなければ忘れられるなんて、どうして思ったのだろう。


強烈な悔恨が、体の奥底から湧き上がり、眩暈がした。
耳元に苦しげな真澄の声が、吐息の奥から聞こえる。

「綺麗になったな……」

息が震える。
体が震える。

肩の皮膚の神経は、完全に麻痺してしまった。

次の瞬間、我を疑うような表情で真澄が無理矢理体を引き離す。まるで犯罪の跡を消すかのように、肩に戻されるショール。

「すまない――」

その謝罪の言葉が、鈍器のようにマヤの後頭部を殴りつける。

こんな一瞬で崩れ去るなんて。
一体、なんのための3年間だったのだ。
怒りにも似た気持ちが湧き上がる。

「どう…して……」

思った以上に、抑揚のない低い声が出てしまう。やめろ、とブレーキを掛けたがもう遅かった。

「どうしてこんなっ……!
なんのために私は3年も日本を離れたと思ってるんですか?
どうして結婚してないんですか?一体何を待っているんですかっ?!
別々に生きて、幸せになろうって、だから……、だから私は――」

帰国して知った衝撃。
とうの昔にもう全てはなるべくしてそうなっていると覚悟していた真澄の結婚は、何一つ成立していなかった。
なぜ、という怒りにも似た衝動。

聞こえたのは、魂の抜けたような真澄の声。

「何も待っていない。
ただ動けないだけだ。
3年前のあの日から……」

そんな虚ろな瞳をした真澄を初めて見た。

「すまない。君の言う通りだ」

波紋が収まっていく。二人の間の水面にたった大きな波紋。それがゆっくりと消えていく。
ピタリと水面が止まった瞬間、真澄の一切のブレのない声が夜陰に放たれる。

「あの家を売却する」

思い出にさえ負けそうだった。
今の二人は、もう過去にも勝てない……。











散々なパーティーが終わる。
何が、と聞かれても、全てが、としか答えようがないほどに、散々だった。
帰りのタクシーの中から、どうにも一人でやり過ごすことの出来ない感情の捌け口を求めて、マヤは親友の番号を呼び出す。

唐突だと分かっていて、深夜であることの非礼を詫びるのも忘れ、マヤは喋りだす。

「ねぇ麗、いつだって正しいことを選べるわけじゃないじゃない。正しいことが幸せとも限らなくて。そもそも何が正しいかなんて、誰にもわからなくて……」

「マヤ……?」

何を喋っているのだ。
自分は、一体何をしようとしているのだ。

「私は……、あの時の私は全部間違っていても、あの人のことを愛したかったし、愛してた。でもどれだけ好きでも愛していても、そんな間違った愛は彼を幸せになんか出来ないって、それぐらいは分かってて……」

嗚咽が止まらなくなる。
叫んでも叫んでも、苦しいだけなのに止められない。

「愛が勝つのはお話の中だけなの。現実の愛は、儚くて弱くて、いつも残酷で……。例えそれが運命だったとしても――」

麗の慰める声が聞こえる。
聞こえるけれど、理解できない。
どうやって電話を切ったのか、ちゃんと謝ったのか、何も覚えていなかった。ただ最後に一言、自分の言い放った言葉だけが、頭蓋骨を押し広げるように、脳内で響いて自分を痛めつける。

『運命なんて、絶対に信じない』

発作が起きかけた体で、必死にそれを探す。
生きていく上でのお守り。
何が起きても、それを握り締めればなんとかなる、その存在。
小さなクラッチバッグの底を乱暴にまさぐる指先に触れた、冷たい感触。強く、強く、それを心臓の上に押し当てる。
そうしないと今にも想いがそこから溢れ出してしまいそうだったから。

3年前、その銀色の鍵で、確かに閉じ込めたその想いが……。


忘れられないのではなくて、
忘れたくない。
諦められないのではなくて、
諦めたくない。


それを認めてしまったら最後、自分はもう壊れてしまうしかないというのに――。











この家に足を踏み入れるのは、実に3年ぶりだ。
永遠にマヤを失ったと思ったあの日から3年。それが早かったのか遅かったのか、自分にはもうよく分からなかった。マヤが居た日々と、居なかった日々、自分にとっての違いはそれだけだった。

ドアを開けると埃っぽい、固まった空気がそこにはあった。
何もかも置き去りにされたような、そんな悲しみが纏わりついたような。その家全体が、世界中から置き去りにされ、忘れ去られていたかのように、時が止まっていた。

パーティーの最後に、無駄に体に流し込んでしまったアルコールが今更嫌なふうに回りだす。靴も脱がずに家に上がると、壁際の電気のスイッチを押してみるが、反応がないのに舌打ちし、無駄にパチパチと鳴らす。ブレーカーを上げなければ点かないのは分かっていた。
どうでもいい、と真澄は暗闇の中をその場所へと突き進む。

100年の眠りについたはずの、その部屋へ――。



月光が差し込み、深夜だというのに、微妙に明るい。
あの夜も、あの夜も……、いつもこの部屋はこうだった。嫌でも気持ちが、感傷的な方向に圧倒的に傾いていく。
どうでもいい、というよりも、どうしようもなかった。

ここには想い出が多すぎる。
生涯でただ一度、誰かを愛し、そして愛された場所なのだから。
そんな場所にもう一度足を踏み入れたら、今度こそ自分は頭がおかしくなるのではないかと、本気で思ったことがある。

部屋の中央に置き去りにされたピアノ。
今となっては、音が鳴ることさえもう信じられない。
埃だらけの鍵盤の蓋に手をかける。
少し黄ばんだ象牙の鍵盤。
恐る恐る、一音だけ音を鳴らすと、確実に狂った音がした。100年置き去りにされた者の泣き声は、きっとこんな声なのだと思わせるよう な、そんな調子っぱずれな物悲しい音だった。

弾ける自信はなかった。
けれども体が覚えていた。

ベーゼンドルファーはこの家の寂しさを、置き去りにされた哀しさを、全て吸い込んだような音で、トロイメライを歌う。
過去を反芻するしか残りの人生を生きていく術のない男が奏でる、最後のトロイメライ。
あの日、弾くことが出来なかった1オクターブ上のあのラの音。
震える小指が、鍵盤を押さえる。


その瞬間、何か、世界が歪んだ。

奇妙な手ごたえがあって、下に下りたラの鍵盤が上がってこない。ラの音を引き止めた、鍵盤の間に隠された異物。真澄の震える指先が、それを引き上げる。
小さく折り畳んだ白い紙。
カサリと僅かな音をたてて、真澄はそれを開く。






”ねぇ速水さん、
怖いのは別れではなくて、
泣くことでもなくて、
傷つくことでさえもなくて、
ただ一つ、
あなたに忘れられてしまうこと。



ねぇ速水さん、
一日ごとに、
あなたにまつわる記憶も想い出も、
一つずつ消えていってしまえばいいのに。


ねぇ速水さん、
もう会えなくても、
例え一生会えなくても、
どれだけ離れても、
遠くへ行っても、
考えるのはきっといつもあなたのことばかり。



ねぇ速水さん、
私が最後にあなたにしてあげられることは、
あなたの目の前から消えてなくなること。



どうかどうか、幸せに。
あなたが幸せでありますように。



でも、もしもいつか、
奇跡が起きて、
何かが起きて、
あなたがこの手紙を見つけて、
そしてその時、
まだ私のことを愛していたら、

あなたに言いたい言葉があります。

私は別々に生きて幸せになるよりも、
あなたと一緒に生きて不幸せになるほうが、
きっと幸せです。


手遅れなまでにあなたを愛してしまった運命とともに。


2003年 3月  北島マヤ”







3年前に見失ったマヤの本当の気持ち。それは3年もこの鍵盤の底に沈んでいた。トロイメライのあのラの音の向こうに。
”手遅れ”というマヤの言葉が真澄を駆り立てる。
手遅れなことなどあるものか。
タキシードの内側から携帯電話を取り出す。
聞いたところで掛ける理由も、機会もないと思い込んでいた、マヤの新しい番号。今更理由など必要ない。
――いや、理由はある。

それは”運命”だからだ。


永遠とも思えるしばしの沈黙。
番号を発信する電子音のあとに呼び出し音が鳴る。

そして奇跡は起こる。


部屋の片隅から、トロイメライが聞こえる。幻よりもずっと現実的な、そしてどこか機械的な生ピアノの再生音。 この部屋のどこかで、着信を知らせるメロディーが鳴っている。
3年前にもこんなことがあった。
想定外に鳴り響く、携帯の着信音。違いはあの時はそれが二人を引き裂く無機質な電子音で、そして今は二人を引き合わせる運命のトロイメライであるということ。

音のするほうへと近づく。
3年前、二人がいつも冬の庭で太陽の恩恵を受けたそのアンティークソファーの後、ホワイトシルバーのドレスのその人はうずくまったままの姿勢で、信じられないという表情でこちらを見上げる。冷たいタイルの上で月光を浴び、恐ろしいほどに透き通った白い肌をしていた。
真澄が静かに携帯を折り畳むと、マヤの手のひらのトロイメライもぷつりと途切れた。

「ご、ごめんなさいっ!
売られてしまう前に、どうしてももう一度この部屋を見たくなって、それで、それで――」

遮るように真澄の腕がその白い細い腕を掴みあげ、ソファーの角から掬い上げる。
長い指が前髪に触れ、額に触れ、頬の輪郭を辿り、顎まで降りてくる。

「あの時、君が考えた道は2つしかなかった。別々に生きて幸せになるか、一緒に生きて不幸せになるか。
だが俺は3つ目の道を考えた。
あの時は選べなかったその3つ目の道を、一緒に選んでくれないか?」

「3つ目の道?」

黒い瞳が一心にこちらを見つめる。その言葉の先にあるものを、強く強く渇望する瞳が。

「一緒に生きて、幸せになろう」

その言葉を、きっと二人は100年も前から待っていた。そしてその言葉が、今二人の庭に100年の眠りから目覚めた春を呼び戻す。

「これは、運命だ」

真澄が強く強く、抱きしめる。
マヤは今、生まれて初めて、運命を受け入れる。望んだ通りの運命を。




「3年も鍵を変えてないなんて、無用心ですね」

腕の中の愛し過ぎるほどのその存在は、照れ隠しも手伝ってすぐにそんなことを言い出す。

「君こそ、よくも失くさずそんなものを大事に持っていたな」

「言ったじゃないですか。これはお守りだって。これを持っていれば、いつかまた、速水さんに逢えるんじゃないかって……」

「同じだ。鍵を変えなければ、いつか君がここに来るのではないかと――」

二人は同時に笑い出す。
あまりにも遠回りをしてたどり着いたその3つ目の道。それでもその道は、その過酷な運命の道を辿ってこなければ、たどり着くことの出来なかった3つ目の道で。


――一緒に生きて、幸せになろう。


100年の眠りにつくはずだった冬の庭に、春が来る。
希望の光と、愛の温かみに溢れたその庭に、今色とりどりの花が咲く。






――一緒に生きて、幸せになろう。










04.17.2006







<FIN>









もし良かったら、杏子のトロイメライをBGMにあとがきなぞ♪(スクリプトは花音さんに制作していただきました。多謝!!)
さて、3周年記念連載の最後の1本、無事に祭り最終日に最終回を迎えることができました。涙。
それぞれのお話は

”つきあって3年=君は僕に恋をする”
”片思いで3年=普通の人”
”別れて3年=冬の庭”

と、3周年にこだわって、それぞれに3縛りの足枷をつけてのお話でした。(条件をつけては自らハードルを高くするのが大好きなドM杏子)
”いつかマヤちゃんにピアニストの役をやって欲しいなぁ”と前から思ってはいて、でもどこか本職をからめたお話ってそこの部分だけ温度が高くなってしまって、読み手に”ついていけない”感を持たせてしまうきらいがあるので、ずっと避けていたお題でもありました。
ピアノについてはあえてあまり触れてません。やっぱりメインは二人の運命の行方であって、トロイメライはその通奏低音であるとういうのが、私の好きなスタイルなので。
一度、”愛ゆえに別れを選ぶ二人”というのをアンハッピーオチでなく(ここ重要!)書いてみたかった杏子としては、満足♪

今だから言えますが、前作の”普通の人”であまりにも全てを使い果たしてしまって、何も書く気力が起こらず、まともに書き始めたのは3月30日(!!)ぐらいから。どれだけ危ない橋を渡っているのか、自覚がなかったので(もう忙しさとかムリする感覚が完全に麻痺してた)、逆に最後まで書けたのだと思います。
時間との戦いは本当に辛かったですが(3話以降は1日1話書いて、翌日UPという強行スケジュールでした)、なぜか”絶対に完結できる”という根拠のない自信があって(ほんとになんなんだか…汗)、焦ることなく最後の瞬間まで、書きたいことを書きたいだけ書いていた気がします。(脱稿したのは今朝の4時……)

こうして3本並べてみると、私らしい作品が3つ並んだなぁ。ふざけてるのかと思うほどにゲロ甘いもの、抉るほどにシリアスなもの、そして切なさバリバリ黒壁もの(笑)、どれもこのお祭という限られた枠の中だからこそ生まれたお話だったと思います。
お祭全体の総括&お礼は、”閉幕のご挨拶”で書いてるので、ここではこの辺で。
最後まで応援してくださった方、このお話を好きだと言ってくださった方、本当にありがとうございました。真夜中に眠すぎて発狂しそうになっても書き続けてる時、どれだけその一言に励まされたことか。涙。

完読記念によかったら拍手かランキングで一言頂けるととても嬉しく思います。



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